「利は元にあり」
以前のコラム「現金出納帳は会計のきほん!」で現金出納帳でお金の管理をしていくこと、「売掛金の入金管理してますか?」で売掛金の入金を管理していくことの大切さをお伝えしました。
今回のコラムは支払いにスポットを当てた内容です。
支払管理をすることで得られるメリットを中心にご説明していきます。
「利は元にあり」という言葉があります。
この言葉には色々な解釈がありますが商売においては、
「利益は上手な仕入れから生まれてくる。」という解釈が多いですね。
ここでいう「上手な仕入れ」とは、何も安く仕入れることのみを指すのではなく、仕入先との信頼関係を築いて、長期的な視点で「上手に仕入れ」することだと、私は解釈しています。
仕入先に対する支払いこそ優先すべき
仕入先から提供される信用こそが、会社が危機に陥った時の拠り所になります。
支払いを悪くしていると仕入先との信頼関係を築くことができず、拠り所を失うことにもなりかねません。
もちろん、商品や製品の品質やサービス内容、価格、納期などで仕入先・外注先を選定することはとても大切なことです。
しかし、相手に求めるだけではなく、自分たちが払うべきものをしっかり支払うという姿勢と取り組みが重要です。
支払管理をすることによるメリット
支払予定がわかる
どんな経営者も、お金に困らない経営をしたいと思っていますが、
いつ、どれだけ支払わなければならないのか? これがわからなければ対策は打てません。
資金繰りが苦しい会社であれば尚更、日単位、週単位、月単位でいくら支払予定があるのかがわかれば安心でしょう。
支払管理をすることでお金の流れがわかるようになり、早めの対策を打つことができるようになります。
支払い遅れがなくなる
しっかり支払うためには、支払うべき金額を明らかにしなければいけません。仕入先からの請求書を鵜呑みにせず、注文されたものが正しく納品されたか? 納品されたものと納品書は一致しているか?
さらに、返品・値引き・割り戻し、処理の訂正など、経理はもちろん現場での仕事の仕方も適切に行うことが大切です。
支払管理を行うことは、これらの仕事の質を高めることです。
その結果として、支払うべき日に正しい金額を支払うことができるのです。
取引先からの信用が高まる
お金にルーズな会社は信頼されません。これは断言できます。
逆に支払うべき代金を常に正しく支払う会社は、相手にとって信頼できる得意先の一つとなるでしょう。
その信頼関係があるからこそ、商品やサービスに対して、厳しい要求を行うことができます。仕入先や外注先は高い質の仕事をするためのパートナーとして考えなくてはいけません。
払うべきものを確実に支払う信頼関係が、厳しい経済環境を一緒に乗り越えていく拠り所になることを忘れないようにしましょう。
支払管理のポイント
仕入先別の買掛金元帳を作成する
仕入先別に月ごとの「前月残高」「当月発生額」「当月支払額」「当月残高」を記録できる台帳を作成することで、仕入先別にいくらの買掛金残高があるのかが明確になります。
加えて、仕入先ごとの支払条件を記入しておくとさらに良いです!
仕入先ごとの買掛金残高を一目瞭然にすることが最初のステップです。
【仕入先別買掛金元帳のサンプル】
仕入先名 | 〇〇年 〇月 | |||
前月残高 | 当月発生額 | 当月支払額 | 当月残高 | |
A社 | 400 | 500 | 400 | 500 |
B社 | 100 | 200 | 150 | 150 |
C社 | 800 | 600 | 400 | 1000 |
【支払条件管理表のサンプル】
仕入先名 | 支払条件 |
A社 | 月末締翌月末支払 預金振込 |
B社 | 20日締翌月15日支払 小切手支払 |
C社 | 月末締翌月末支払(半金、半手) |
もしも今まで買掛金元帳を作成していなかったならば、現在の買掛金残高がいつ発生したものなのか確認してください。必要に応じて仕入先の認識と一致しているかを確認することも大切です。
支払期日を順守する
資金繰りを安定させる方法の一つに支払いサイトの長期化があります。
支払いサイトが長くなれば、それだけ資金ストックをもつ期間が長くなり、自社の資金繰りは改善されます。
だからと言って、闇雲に仕入先に対して支払いサイトの長期化を打診することについては慎重に検討する必要があるでしょう。
仕入先の立場からみると、売掛金の回収サイトが長くなるため、資金ストックをもつ期間が短くなり資金繰りが悪化することを意味します。
また、資金繰りが苦しいと勘繰られてしまって、その後の円滑な取引がしずらくなる可能性もあります。
支払管理は仕組みづくりが大切です
買掛金元帳で支払管理をしっかりと行うことで、いつ、いくら支払うのかが明確になります。
その結果、期日通りにしっかり支払うことで、仕入先との信頼関係を高められることをご理解いただけたと思います。
売掛金管理のコラムでも説明しましたが、経営者は自社の資金繰りのことを常に考えています。
しかし、従業員はそうでもないことは良くあります。
仕入等の発注、購買、支払業務は会社の業務の中でも不正や間違いが起きやすい業務。
仕入先の過剰請求、ダブリ請求による支払過ぎ、自社の仕入の計上漏れによる支払過少、仕入先との請求書の相違の未処理、などが例として挙げられます。
会社の規模に関係なく、従業員にも支払管理の重要性を認識させ、不正や間違いが起きない仕組みを作ることが大切です。
これらの仕組みをくつくることで、従業員も会社の資金繰りを自然と意識できるようになっていくのです。
「会計・経理・税務」に関するコラムは他にもありますのでご参考にしてください。
愛知県豊橋市 中小企業診断士事務所 彦坂マネジメントオフィス