売上減少を4つの要因から分析します
売上が減っているとき、経営者はその要因をなんとなく理解しています。
しかし「なんとなく」のままにしていると、的外れな対応策をとってしまいがちです。
最悪の場合は、そのうち売上は回復するといってそのまま放置してしまう なんてことになりかねません。
そうならないため、売上が減少しているなら、その原因をしっかりと分析することがとても大切です。
とはいっても、売上の現状分析ってどうやるのかわからない経営者も多いと思います。
そんな経営者のために、
4つの要因から分析する方法をご紹介します。
① 市場の要因
- 景気が落ち込み、市場が冷え込んでいる
- 自社にとって不利になる法改正があった
など
② 顧客の要因
- 主要な取引先の業績が低迷している
- 流行の移り変わり商品やサービスが陳腐化
など
③ 競合の要因
- 競合企業が新戦略で売上を伸ばしている
- 商圏内に新規参入者が進出している
など
④ 内部の要因
- 製品・サービスの品質が低下している
- 社員のモチベーションが低下している
など
売上が減少している要因は1つとは限らず、複合的に絡み合っている場合が多いですが、その中でも何がいちばんの減少要因なのか?を把握することが重要です。
これを「はっきり」させることによって、その後の対応策が変わってきます。
もちろん市場の要因など、自社ではどうすることも出来ないこともありますが、自社の売上が減少している要因を、安易に市場の要因だと考えるのは避けてほしいです。
商品別・顧客別などに分類して状況をつかむ
売上が減少しているとき、すべての商品や顧客層の売上が減っているということは滅多にありません。売上が大きく減っている商品もあれば、反対に売上が増えている商品もある。
こういうことはよくあります。
このような売上減少の実態とその原因を明らかすることで、対応策が的外れになることを防止できます。
商品別 | 前期 | 当期 | 増減 | 増加率 |
A商品 | ||||
B商品 | ||||
C商品 | ||||
その他 | ||||
合計 |
顧客別 | 前期 | 当期 | 増減 | 増加率 |
既存客(男性) | ||||
既存客(女性) | ||||
新規客(男性) | ||||
既存客(女性) | ||||
合計 |
用途別 | 前期 | 当期 | 増減 | 増加率 |
業務用 | ||||
レジャー用 | ||||
贈答用 | ||||
その他 | ||||
合計 |
商品別、顧客別だけではなく、用途別、支店別、営業マン別など、分類の仕方はその会社の状況によって最適なものは異なります。
ただ最初のうちは、項目を細かくしすぎず、主要な項目を優先して管理するほうが良いでしょう。その際「その他項目」も使うことも検討してください。
管理に慣れてきたら徐々に項目数を増やしていくことで、より詳細な売上状況を把握することができます。
分類項目を組み合わせて分析する
さらに「商品別×顧客別」など、売上の状況を複合的に分析することも可能な限りしていくことをお薦めします。
顧客層ごとに、どの商品が増えていて、どの商品が減っているのかを見える化することによって、売上減少の本質的な問題が見えてきます。
商品別 × 顧客別 |
顧客層 既存客(男性) | |||
前期 | 当期 | 増減 | 増加率 | |
A商品 | ||||
B商品 | ||||
C商品 | ||||
その他 | ||||
合計 |
売上減少の原因は、単価?数量?
売上を分析するうえで、とても重要な算式があります。
売上高 = 数量 × 単価
売上高は必ずこの算式で表すことができます。
販売数量が増えたら? 減ったら?
販売単価が増えたら? 減ったら?
それぞれの場合をまとめてみましょう。
数量の減少要因として考えられることは、
・競合企業の参入で顧客を奪われている
・流行の変化でほかの商品に置き換わっている
・顧客の節約志向で買い控えが起こっている
単価の減少要因として考えられることは、
・安売り競争に巻き込まれている
・値引き販売が多くなっている
・単価の低い商品の売上が増えている
売上の減少の原因が、数量の減少によるものなのか、単価の低下によるものなのか、はっきりさせることが重要です。
売上減少への対応策を検討します
売上減少がどうして起きているのか現状分析できたら、その対応策を検討します。
売上減少への対応策を考える際の基本戦略は、
会社の売上が減少しているなかで、反対に売上を増やしているような商品や顧客層があれば、それは自社にとって強みとなる分野(商品・顧客層など)のはず。
中小企業は多くの場合、ヒト・モノ・カネの経営資源に限りがありますので、限られた経営資源を売上を伸ばせる可能性が高い分野に集中する戦略が有効です。
売上減少の要因が「市場の要因」などの場合、自社の経営努力だけではどうしようもないケースが多いと思います。そのような分野に経営資源を投入する対応策は避けるべきだと考えます。
どの分野の売上増加を目指すのか決まったら、次は具体的な方策を検討します。
例えば、
販売数量の増加をめざすケース
・関連商品を提案する
・まとめ買い・セット買いプランを提案する
・既存商品の活用事例等を紹介して購入頻度増加
・新商品を開発して提案する
・アフターサービスを充実させてリピートを促進
など
販売単価の増加をめざすケース
・上位の高付加価値商品を提案する
・商品+サービスのセットプランを提案する
・優良顧客に特別な商品の提案をする
・ポップやSNS等で情報発信してブランド力向上
など
対応策を検討する際に注意したいこと
売上アップのための対応策をいろいろありますが、注意してほしいことがあります。
このケースのとき、
経営者の気持ちとしては、単価を下げて数量を増やそうとしたくなります。
しかしこの方法をとった場合には問題があります。
薄利多売がすべてダメだとは言いません。競合企業の状況やシェアの占有率によっては効果的な方法である場合もあります。
だだし、薄利多売が成功するためには、仕入価格の引き下げ交渉をしたり、人件費や固定費の引き下げを同時に検討する必要があります。
「売上が増えたけど、利益は減った。」では元も子もありません。
売上が減少する中、単価が増加している商品やサービスは、競合と差別化された自社の強みである可能性が高いです。
それならば単価の引き下げを検討するよりも、サービスや技術の向上で付加価値を高めて、より良い単価を設定することも検討したいところです。
愛知県豊橋市 中小企業診断士事務所 彦坂マネジメントオフィス