実はくせ者だった「売掛金」
前回のコラム「現金出納帳は会計のきほん!」で現金出納帳でお金の管理をしていくことの大切さを解説しました。
今回は売掛金にスポットを当てた内容です。
売上を確保して、適正利益をあげることはとても大切なことですが、それと同じくらい、いやそれ以上に大切なことがあります。それは、
売上を確実に回収すること
そんなこと当たり前でしょ!と言われてしまいそうですが、
そうなんです。当たり前のことなんです。
飲食店などの現金商売だとその場で売上代金を回収できるため、あまり気にしないこともあると思います。
ただ売上先が会社や事業者となると、一般的な取引として月締めで請求を起こしてから、その後入金という流れになります。
取引の契約内容にもよりますが、
月締め請求 → 翌月末までに入金 が一般的だと思います。
「すでに納品して月締めで請求を起こしたけど、入金はまだ。」この状態の売上を「売掛金」といいます。
実はこの「売掛金」がくせ者です!
通常の販売活動は「仕入が先行」して発生します。
ですからお金の面から考えると売掛金の入金よりも、仕入の支払いのほうが先行するのです。
この「支払い」と「入金」の時間差を自社が負担していることになります。
わかりやすい例として、
8月中旬に材料を仕入て加工し、9月初旬に納品した場合を考えます。
ここで発生する1か月を自社の資金で負担していることになります。
そのためこの期間が長くなればなるほど資金繰りが苦しくなるということです。
(売掛金の回収方法が「手形」の場合はさらに長くなります)
同じ取引先に対して、月に何度も納品しているような場合、「請求漏れ」が発生することもあります。
請求漏れや回収漏れは資金の行き詰まりの原因になりかねません。
当たり前のことなんですが、あえて言います。
売上をあげることよりも大切なこと、それは売掛金を確実に回収することです。
売掛金管理をすることのメリット
回収予定日がわかる
経営者は資金繰りを安定させたいと考えます。
そのためには、お金の動きをあらかじめ把握し、余裕を持って事前に対策することが必要です。売掛金管理をすることで取引先別の回収条件が明確になりますので、
いつ、いくら入金されるのか、回収予定日がわかります。
請求漏れがなくなる
請求漏れは自社の資金繰りを悪くすることはもちろんのこと、請求ミスの場合には取引先に迷惑が掛かり信用を失ってしまうことにもなりかねません。
売掛金管理をすることで、請求すべき金額と実際の入金額をチェックする仕組みができます。
取引先の売上債権(売掛金や受取手形)の残高をいつでも把握できることで、請求すべき金額がわからなくなったり、間違った金額の請求書が発行されることを防止することができます。
回収漏れがなくなる
回収期間を短期化することが難しくても、回収期間の長期化は避けなければなりません。どこの会社も資金繰りが厳しいなかで、規模の小さい会社は少しでも支払いを先延ばししたいと考えます。
それを放置していると、いつの間にか支払いを遅らされていることは少なくありません。
回収期間の長期化を避けるためにも、回収は取引条件通りにされているか常に厳しくチェックしておくことが大切です。
売掛金管理をすることで、回収の遅れに素早く気づくことができ、早い対応ができるようになります。
売掛金管理のポイント
取引先別の売掛金台帳を作成する
取引先別に月ごとの「前月残高」「当月発生額」「当月回収額」「当月残高」を記録できる台帳を作成します。
さらに、取引先ごとの回収条件を記入しておくと、さらに良いでしょう。
取引先ごとの売掛金残高を一目瞭然にすることが最初のステップです。
【取引先別売掛金台帳のサンプル】
取引先名 | 〇〇年 〇月 | |||
前月残高 | 当月発生額 | 当月回収額 | 当月残高 | |
A商事 | 400 | 600 | 300 | 700 |
B工業 | 600 | 700 | 500 | 800 |
C物産 | 200 | 300 | 200 | 300 |
【回収条件管理表のサンプル】
取引先名 | 回収条件 |
A商事 | 月末締翌月末支払 預金振込 |
B工業 | 20日締翌月15日支払 小切手支払 |
C物産 | 月末締翌月末支払(20万未満振込、20万以上60日手形) |
もしも、今まで売掛金管理をしていなかったのならば、現在の売掛金残高がいつ発生したものなのかを確認してください。必要に応じて取引先の認識と一致しているかを確認することも大切です。
回収日管理を徹底する
入金予定日に入金がない場合には、すぐに取引先に確認します。
「すぐに」連絡を取ることがポイントです!
売掛金の回収にこちらが訪問する場合には、営業担当が集金に訪問できていないなど、こちらの都合で回収が伸びていることもありますのでその点も注意しましょう。回収漏れを防ぐために振り込みに変更することも一つの方法です。
回収日管理を徹底しても、そもそも回収までの期間が長い取引先はあるものです。支払期間が長い、または当初の約束通りに支払ってくれない取引先については取引条件を変えてもらう努力を続けます。
中長期的には回収の良い取引先に売上をシフトしていくことも検討します。
支払いの良い会社は業績も良い傾向にあり、こうした会社と取引を深めることができれば、こちらの収益性も高まります。
売掛金管理は仕組みづくりが大切です
売上を確実に回収することの大切さをご理解いただけたと思います。
経営者は自社の資金繰りのことを常に考えていますが、従業員はそうでもないことは良くあります。請求漏れも、営業担当が集金日を忘れてしまうことも、原因は同じです。
これは会社のお金の状況を把握していないため、ある程度は仕方がありません。
だからこそ、経営者は売掛金管理を社内で仕組化する必要があるのです。
前回のコラム「現金出納帳は会計のきほん!」もご参考にしてください。
愛知県豊橋市 中小企業診断士事務所 彦坂マネジメントオフィス